勇者エクスカイザー


 ● 偉大なる勇者伝説の始まり

     と、仰々しく書き始めたわけですけど、TVアニメ全8作の第1作目がこの
    エクスカイザーというわけです。

     大まかな説明を書くと、
     宇宙のあらゆる宝を略奪する宇宙海賊・ガイスターを追ってやってきた宇宙警察カイザースの
    リーダー・エクスカイザーが一人の少年の家にある車と融合し、巨大ロボットとなってカイザース
    の仲間達と共にガイスターの魔の手から地球を守っていくと言う物語です。

     で、このエクスカイザー、私が小学校の頃にやっていたのですが、実にたくさんの「あたりまえ」
    が詰まっているのです。

     「命って大切だよね」「家族は仲良くしなくっちゃ」「友達っていいね」・・・

     そんな「あたりまえ」が、ごく当たり前に描かれているのです。

     奇をてらった演出や、どこぞのお偉いさんに四の五の言われる題材を取り上げるよりもこっちの
    ほうが私は断然好きです。

     だって、そうじゃないですか。
     エクスカイザーは自分が宿っている車の持ち主の子どもであるコウタ君をとっても大切に思ってい
    て、何があろうとも守ろうとしている。そのコウタ君も、エクスカイザーのことが「地球を守るヒーロー」
    としてでは無く、大切な友達としてとても大好きなんです。
     そんな、ごく当たり前の「絆」。
     でも、今を生きる私達に一番大切なのも、こんな「絆」なんじゃないでしょうか?

     「勇者と子どもの心のふれあい」は、勇者シリーズを通しての一つのテーマなのですが、この作品は
    それが最もよく描かれていると思います。

 

     まあ、難しい話はここまでにして、面白いことも少し。

     このエクスカイザーは、悪党もとっても魅力的なんです。

     まずは、いつもエクスカイザー達と戦っては負けていくガイスター四将です。
     エクスカイザーと同じく、博物館にあった恐竜の骨の標本と合体してロボットになったアーマーガイスト
    ホーンガイスト、プテラガイスト、サンダーガイストの4体は、何かにつけて地球の「宝」を盗もうとしま
    す。
     けれど、4人が4人ともどこか抜けてて情報収集の手段はもっぱらアジトにあるTV(笑)。どこかで
    「○○は宝物」と聞けばなんであろうと取ろうとする。それは、おかあさんやお父さんと言ったものから
    電気などと言った捕えどころのないものまで多岐にわたります。

     彼らなりには頑張っているんだけど、おバカだからいつもどこかで失敗して首領であるダイノガイス
    ト様に叱られちゃう。それでも懲りずにアジトでごろごろしてる。

     悪党なのにどこか憎めない4バカちゃんなのです。

     それとは逆に、とことんまで「悪のかっこよさ」を追求したかのようなダイノガイスト。いえ、ここは
    「ダイノガイスト様」と呼ばせていただきましょう。
     なぜそこまで言うのかと言うと、何につけてもその圧倒的な強さ! 4バカがあっさりしばかれてる
    カイザースをたったお一人で蹴散らしてしまうほど。それからの、登場後の徹底した悪党ぶり!

     そして、これが、私がダイノガイスト様に心酔する最大の理由なのですが、
    それは、ダイノガイスト様の最期

    ダイノガイスト『なぜとどめをささん!?』
    エクスカイザー『命は宝だからだ! たとえ、貴様のような悪党のものでもな!』
    ダイノガイスト『宝? ・・・命は宝か・・・』

 ダイノガイスト『ならばこの宝! 貴様などに渡してなるものか!!』


    そうして、ダイノガイスト様は自ら燃え盛る太陽に落下していくのです。
    頑ななまでの『悪』として、『漢』としての壮絶な死に際。これに心動かされた子ども達は数知れない
   のではないでしょうか。

 

 

    そして最後に、コウタとエクスカイザーのお別れのシーン。
    コウタ君は、エクスカイザーに「また、会えるよね?」と訪ねます。
    そこで、普通ならば「ああ」とか、「きっと」とか言うのでしょう。しかし、エクスカイザーは違います。
    「約束は出来ない」。エクスカイザーはそう答えるのです。
    受け取りかたによっては、とても冷たい言葉でしょう。けれど、エクスカイザーはコウタ君のために
   そう言ったのです。エクスカイザーは、それこそ全宇宙で平和のために戦いつづけなければならない
   のですから。
    それでも、エクスカイザーはコウタ君のことをちゃんと想っています。

    「コウタが私のことを覚えていてくれる限り

              私は、いつもコウタの心の中にいる」

    と。
    それは同時に、エクスカイザーがコウタ君のことを覚えている限り、コウタ君はいつもエクスカイザー
   の心の中にいると言うことを表しています。
    そして、エクスカイザーがコウタ君のことを忘れる事は、決して無い。

    悲しい別れでも、暖かい気持ちに変えてくれる。
    このシーンこそが、「勇者エクスカイザー」の集大成ではないかと思います。

    今、もう一度見てみたいアニメ
    今、一番みんなに見てもらいたいアニメ
    エクスカイザーが送ってくれるメッセージを、みんなも受け取って見ませんか?

    人は誰でも、コウタ君になれるのですから。

 

(2001.1.31)

 

 追記

  「新世代ロボット戦記 ブレイブサーガ」のサブシナリオでエクスカイザーとコウタ君が再会する
 シナリオをみた時、私は本当に嬉しかった。
  よかったね、コウタ君。