七星勇者フェリスヴァイン
きーんこーんかーんこーん
瞬がフェリスと出会ってより二日、時は何事も無く進み、瞬もこの日の授業を全て終えて
亜希と共に昇降口から表に出てきた。
瞬「やっと終わったね〜」
亜希「そうねー。ちょうど掃除当番もなかったし」
瞬「やっぱり、算数があると疲れるよー」
亜希「瞬ってホント苦手よねー、算数」
二人は、そんなとりとめもない事を話ながら校門の方へ歩いていた。
その校門の所に、何やら人だかりができているのを、たまたま前を向いた亜希が発見する。
亜希「あれ?」
瞬「ん? どうしたの?」
亜希「瞬、あれ、なんだろ?」
そう言って、亜希は人だかりを指差す。
瞬は亜希の指先をたどり、その先にあるものを見て小首をかしげた。
瞬「なにか、あったのかな?」
瞬と亜希は、お互いに顔を見合わせる。
亜希「なんだろうね?」
瞬「とにかく、行って見ようよ」
亜希もそれに頷いて、二人は人だかりのほうへと駆け出していった。
二人がたどりつくと、そこでは子供達が何かを見てざわめいているところだった。
瞬と亜希も、どうなっているのか見ようと人垣を掻き分けていく。
ようやく先頭まで顔を出した時、そこにあるものを見て、瞬の目が大きく見開かれた。
瞬(……フェ…)
瞬から一歩遅れて、亜希も人ごみの中から顔を出した。
亜希「何? あの犬?」
亜希がそれを見てそう呟く。
子供達の注目の的となっていたのは、銀色の毛皮を持ち
左前足にハンカチを巻いた犬だった。
その犬は何かを探すように周りをきょろきょろと見まわしていたが、瞬の顔を見つけると
そちらのほうへと首を向けた。
そして、瞬と犬の目が合う。
瞬(…………)
瞬と犬が無言のままみつめあう。
瞬の額には、次々と冷や汗が流れ始めていた。
そして、犬が口を開こうとした、次の瞬間。
瞬「ふぇりすっっっっ!!!」
どどどどどどどど……!!
その犬――フェリス――を引っ掴んで、土煙さえたてながらすごい勢いで走り去っていく
瞬の姿があった。
亜希「……瞬?」
亜希は、何か言いた気に手を上げたまま、ぼーぜんと遠ざかっていく瞬の姿を見つめる
だけだった。