七星勇者フェリスヴァイン


 そこは、切り立つようにそびえる岩山の頂上であった。
 その、雲を眼下に見下ろす場所に、三日月を従えて一つの影が佇んでいた。
 影はつま先を立て、直立した姿勢で夜の空を吹く風に身をさらしている。
 そして、ふと、気づいたように月を見上げた。
 かすかな月明かりに顔が照らし出される。

「白き風は吹いた……」

 開いた口から、厳かに声が発せられる。

「『風』はやがて『嵐』を呼ぶ……吹きすさばんとする『嵐』を止めることは、不可能」

 その言葉が示すとおりに、激しい突風が天空を駆けぬける。
 その風は、かすかに月にかかっていた雲を彼方へと運んでいった。
 さらに鮮やかな月の光が夜の世界を照らし出す。

「なれば――今こそが、目覚めの時――」

 刹那、再び吹いた風が雲を巻き上げ、影の姿を覆い隠した。

「今こそが、人々を護る『白き盾達』の目覚める時――!」

 雲が晴れ、一羽の鷹が、月光を浴びながら飛翔した。

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