七星勇者フェリスヴァイン


由美「おじさん、黒鍵機反応だ!」
陽司「何? 場所は!」

 突然の黒鍵機反応にも動じず、由美は陽司の指示に従ってコンソールを操作する。しか
し、その場所がわかったとたん、わずかに由美の表情が動いた。

由美「これは……」
陽司「どうした?」

 由美は息と共に心の動揺を押さえ込み、勤めて冷静な調子で画面に示された状況を読み
上げていく。

由美「場所は、星野コスモスホール近辺! 大型黒鍵機1体に、小型の黒鍵機が5!」

 星野コスモスホール、それは博美と輝美が向かっているはずのイベントホールの名前で
あった。そのことをすぐに察した陽司は、すぐに由美に問いただす。

陽司「……博美君、輝美君からの連絡は?」
由美「博美っちの方は……だめだ、繋がんない。んじゃ……」

 そう言いながら輝美への通信をつなげようとしたとき、都合がよすぎると思えるほどの
タイミングで通信が入ったことを告げるビープ音が由美の耳に入る。由美はすぐさま通信
のスイッチをONにする。

輝美『司令部! こちら輝美、応答願います!』
由美「はいよ。んで、状況はどうなってんの?」

 由美は向こうの状況を考え、きわめて短い言葉で話を促す。通信機の向こうの輝美も内
心穏やかではなかったろうが務めて事務的に状況を報告する。

輝美『はい、小型のロボット5体がドームを取り囲んでエネルギーフィールドのようなも
  のを形成しています。そのフィールドのせいで、姉さんとの通信が妨害されているよ
  うです。
   ドーム内部の様子は不明。大型黒鍵機に動きはありません』
陽司「よし、わかった。すぐにフェリス達を急行させよう」
輝美『私は、もう少しドームに近づいて見ます! 姉さんとの通信を中継できるかもしれ
  ませんから!』
陽司「わかった。くれぐれも気をつけてくれ!」

 由美は輝美との通信を切ると、続けて格納庫のビーストガーダーズへと通信をつなぐ。

由美「って事だ。あんた達は先行してドーム内の人たちを救助してくれ!」
グランリッド『了解!』
陽司「フェリスは瞬と共に亜空間コンテナで現場へ急行、ドーム内の人々の救助が終わる
  まで大型黒鍵機をひきつけておくんだ!」
フェリス「わかった! 行くぞ、瞬!」
「うんっ!」

 陽司からの指示が飛ぶと同時にフェリスと瞬は格納庫へ向かうべく司令室を飛び出す。
一方、第2格納庫でも、開け放たれたハッチからビーストモードのグランリッドとエクシ
ードが飛び出し、エクシードがグランリッドの肩をつかまえて飛翔、水路に繋がっている
池から飛び出したウェルシャークと合流し、現場目指して飛び立った。

 


 その頃、黒鍵機の作るピラミッド型フィールドに囚われたドームの内部では、博美が観
客の脱出路を確保しようと外に繋がるドアを開けようと苦心していた。しかし、鍵をかけ
ているわけでもないのにどの扉もびくともしなかった。

博美「ったく、どうなってんの……よっ!」

 博美は悪態をつきながら扉を蹴り飛ばすが、返ってくるのはまるで壁を蹴っているよう
な固い感触だけである。
 苦い表情で扉をにらみつけた博美は、スカートに入れていた携帯電話型通信機を取り出
し、本部との通信を試みる。

博美「……こっちもダメ、か……」

 相も変わらずノイズしか返さない通信機に舌打ちしたとき、通路の向こう側から先ほど
見知った青年が駆け寄ってきた。

デューン「そっち、どうだ?」
博美「全然ダメ……そっちは?」
デューン「こっちもだ。皆に手伝ってもらってるけど、どのドアも開かない!」
博美「……閉じ込められた、ってこと、ね」

 博美は自分の置かれた状況を把握して嘆息する。

デューン「どうする? お客さん達抑えておくのもそろそろ限界っぽいし……」
博美「む〜……」

 お互い、脱出方法を考えてみるが、閉じ込められているという状況しかわからない以上、
明確な脱出方法が思い浮かぶわけではない。
 考えに詰まって博美がサイドテールに手を伸ばしたとき、スカートのポケットから着信
を告げるメロディーが鳴り響いた。それが聞こえた瞬間、博美はむしりとるようにポケッ
トから携帯型通信機を取り出し、自分に呼びかけを続けている特別回線を開く。

博美「はい! こちら、秋月!!」
輝美『姉さん!? よかった……やっと繋がった……』
博美「輝美?! あんた、今、どこに……じゃなくって」

 博美は慌てて飛び出した言葉を飲み込むと、素早く現状で執るべきことを頭の中で整理
し、妹への言葉を言いなおす。

博美「状況は?!」
輝美『ホール周辺に大型1、小型5。小型が形成するエネルギーフィールドがホールを取
  り囲んでいるわ!
   フェリスさんとビーストガーダーズが救助のためこっちに急行中よ!』
博美「……なるほどね、そういうこと……」

 輝美からおおよその状況を聞き、ようやく自分達がどのような状況に置かれているかを
把握する博美。頭に叩き込んであるあらゆる知識を総動員し、博美はこの場で自分のする
べきことを頭の中で組み立てていく。
 そして、そんな姉の心中を察したかのような支持が通信機の向こうから飛んできた。

輝美『今から戦闘想定区域から一番遠いゲートを割り出して送るから、姉さん……』
博美「わかってるって。観客をそっちに誘導すればいいんでしょ? あんたは……」
輝美『ビーストガーダーズのサポートと、レスキューの要請ね?』
博美「おっけ! じゃ、行動開始ね!」
輝美『姉さん、気をつけてね』
博美「輝美もね!」

 輝美からの通信を切った博美は、耳から離した携帯の画面に目を落とす。そこに次々と
表示されるホールの概略図とその避難経路を確認し、一つ頷くとあっけにとられたままの
デューンのほうを振り向いた。

博美「じゃ、行くわよっ!」
デューン「あ、ああ……」

 博美は、いまだに状況を飲み込めていない青年の手を引っ張り駆け出していった。

 


 ドームの外周にいた輝美は、手にした通信機でレスキューの出動要請を済ませながら脱
出予定ゲートに向かって走っていた。そして、その目に同じところを目指して飛んできた
ビーストガーダーズの姿が映る。

輝美「皆さん、こっちです!」

 ビーストガーダーズは地上で手を振る輝美を見つけ、そちらのほうへと向かう。エクシ
ードが掴んでいたグランリッドを放し、3人はロボットに変形しながら輝美の近くに降り
立つ。

輝美「B−2ゲートからB−3ゲートまでのフィールドを解除してください!」
グランリッド「了解! みんな!」
ウェルシャーク「おう! ネイチャートライアタックだな!?」
エクシード「……行くぞ!」

 エクシードの掛け声と共に3人がそれぞれ散らばって駆け出す。棍を、クナイを、ハー
ケンを手にそれぞれが目指した場所へと各々の獲物をつきたてた。

グランリッド「でぇぃっ!」
エクシード「……フッ!」
ウェルシャーク「せぇりゃぁっ!」

 それぞれが振り下ろした武器は、電気が爆ぜるような光と耳障りなノイズを伴ってフィ
ールドへと食い込んだ。と同時に、各々の体に突然重力が増したかのような負荷が掛かり
始める。

グランリッド「ぐっ……!」
ウェルシャーク「ん……な、ろぉっ!」

 3人は体に掛かる負荷に抗いながら、それぞれの武器を頂点として正三角形のラインを
徐々に描き始める。エクシードからグランリッドへ、グランリッドからウェルシャーク、
そしてウェルシャークからエクシードへと。それぞれのラインが繋がったとき、三角のラ
イン内をビーストガーダーズのエネルギーが循環、増幅されていく。

グランリッド「いきますっ!」
二人『おうっっ!!』

『ネイチャー・トライ・アタァァァック!!』

 ビーストガーダーズのそれぞれから放たれたエネルギーがエネルギーフィールドと干渉、
反発を始め、徐々にライン内のフィールドを破り始める。
 ホールの反対側に待機していた黒鍵機デルタ・Qはフィールドに起きた異変を察知しそ
ちらに向かおうと歩き始める。が、その前に突如現れた影が歩き始めたデルタ・Qを殴り
飛ばした。

FV「貴様の相手は俺だ!」
『ビーストガーダーズのところへは行かせない!』

 ホールを背に立ちはだかったフェリスヴァインは両肩のアーマーからヴァインブレード
を取り出し、それを両手に構えデルタ・Qへと飛び掛った。
 右から振り下ろされた剣戟はかわされ、続けてはなった左の剣も同様にかわされる。フ
ェリスヴァインはそれを見越していたかのごとく、剣を振った勢いのまま体を回転させ、
勢いをそのままに横薙ぎに剣を振るう。その剣はデルタ・Qの腕を捉えそのまま重心を移
動、食い込んでいる剣の背に空いたヴァインブレードを押し付け、両の刃を解き放つ。
 きり飛ばされた右腕と共に舞い飛ぶデルタ・Qの体。それが地に付く前に、フェリスヴ
ァインは胸の狼をそちらに向ける。

FV「フレイムシューター!」

 狼の口から放たれた火球がデルタ・Qに着弾、地面につくと同時に爆発が起こる。

『……やっ、た?』
FV「いや、まだだ」

 フェリスヴァインは、用心深く改めて二刀を構えなおす。
 フェリスの言葉どおり、煙の中からデルタ・Qがゆっくりと起き上がる。デルタ・Qは
力を込めるように身をたわめるとその体の表面に電気が走り始めた。その電気は頭部へと
集中していき、全ての電気が東部に集中したとき、頭頂部から一筋の電撃が天に向かって
放たれる。
 来るであろう電撃に供え構えるフェリスヴァイン。だが、光と轟音はフェリスヴァイン
の真後ろからやってきた。それは紛れもなくデルタ・Qの電撃によってもたらされたもの。
 予想だにしないところから響いた轟音に驚き、フェリスヴァインは後ろのホールを振り
返った。

FV「な、なんだと……!」

 呆然とするフェリスヴァインを尻目に、再び電撃を放つデルタ・Q。その電撃はフィー
ルドを形成する登頂の黒鍵機に注がれ、登頂から底辺に向かって轟音と共に電撃が走り抜
けていった。電撃の轟音に混じり、かすかながら電撃に弾き飛ばされたのであろうビース
トガーダーズの叫び声が聞こえる。

FV「それ以上は、させん!」

 ビーストガーダーズを守らんと、フェリスヴァインは更に電撃を放とうとしていたデル
タ・Qに飛び掛っていった。

 


 ドームの裏側では、2度にわたって弾き飛ばされたビーストガーダーズが地に伏せって
いた。
 体に電撃の残滓を纏わせながらも、三人は今一度フィールドを破らんと力を振り絞って
立ち上がる。そして、それぞれの武器を手に三度フィールドへと駆け出す。

エクシード「ネイチャー!」
グランリッド「トライッ!」
ウェルシャーク「アタァァァックッ!!」

 三角形の力場がフィールドと干渉しあい、激しいスパークを放ってぶつかり合う。

3人『オオォォォォォッッ!!』

 そんな三人の様子を心配そうに見つめていた輝美の下に博美からの通信が入った。

輝美「姉さん?」
博美『輝美……フィールド、まだ……?』
輝美「姉さん、どうしたの?」

 先ほどとは打って変わった疲れきっている姉の声を聞き、不審に思った輝美は思わず聞
き返す。すると、再びかすれ気味の声が通信機から聞こえてきた。

博美『予定のゲート前まで、みんな、移動させたんだけどさ……どーゆーワケか、バタバ
  タ倒れる人が続出してるのよ……』
輝美「ね、姉さんは?!」
博美『は、はは……デスク派には、ちょっと、キツいかな……?』
輝美「姉さんっ!」

 その時、再び閃光と共に電撃がフィールドを走りぬけた。弾き飛ばされまいとその力に
抵抗する三人だったが、それもかなわずに弾き飛ばされてしまう。地面を、花壇を、街灯
を砕きながら大地に叩きつけられる三人。そのへし折られた街灯の一本が、こともあろう
に輝美のいるところに向かって飛来してきた。

輝美「……え?」

 事態を把握することも出来ず、ただ自分に襲い掛かってくるそれを呆然と見るしかない
輝美。
 それが今まさに輝美の命を奪わんとしたそのとき、突如、輝美の後ろから黒い手が突き
出された。飛来した街灯はまるで見えない壁にでもぶつかったかのようにひしゃげ、やが
て細かな破片へと四散する。
 勢いを失った破片が輝美に降り注ごうとしたが、輝美の体は黒い影が差し出したコート
に包まれ、破片の雨から守り抜かれた。
 呆然としている輝美を包み込んでいたコートが開かれ、その背後にいた影が声を掛ける。

青年「……無事か」
輝美「……あ……」

 輝美が振り返り、見上げた先にいたのは公園であったあの黒いコートの青年だった。少
しの間ぼうっと青年の顔を見つめていた輝美だったが、はっと正気に返り、顔を赤くしな
がら頭を下げる。

輝美「あ、ありがとうございますっ!」

 頭を上げたあと、輝美は青年がなぜこのような所にいるのかと不思議に思う。確かこの
ドーム周辺は輝美の要請で交通規制が敷かれているはずである。

輝美「あの、何故……」

 しかし、青年は輝美の言葉は意に介していないようにじっとフィールドに包まれたドー
ムを見つめている。

輝美「あ、あの!」
青年「……ずいぶん、手間取っているようだな」
輝美「え……?」
青年「中の人間を救いたいのなら、急いだほうがいい」

 目をぱちくりさせている輝美に青年が告げた言葉は、驚くべきものだった。

青年「あれは地脈エネルギー採取用の黒鍵機だ。その機能は地脈だけでなく、中にいる生
  物の生体エネルギーにも及ぶ。
   このままなら……中の人間は5分ともつまい」
輝美「え? そ、そんな……」

 輝美の向ける視線にも、青年は何も答えない。信じる、信じないは輝美の勝手というこ
とだろう。
 輝美はぐっと拳を握り締めると、意を決したように通信機を手に取った。

 


ウェルシャーク「なにィ!? 中の奴らが5分ともたないだ?!」
エクシード「となれば、我らに許された時間はおよそ3分。次が最後だ」
グランリッド「ええ。行きますよ、二人とも!」

『ネイチャー・トライ・アタァァァック!!』

 ビーストガーダーズが眼前にそびえる壁を打ち破らんとそれぞれの武器を叩きつけた。
障壁に食い込んだ各々の武器を、決して放すまいと3人はしっかと握り締める。

ウェルシャーク「もう、絶対に離れねェぞ!」
エクシード「あれが来る前に、一気に破ってやる!」
グランリッド「全力を、注ぎ込んで!」

三人『うおぉぉぉぉぉぉっっ!』

 三人の放ったそれまで以上の力が、魔の障壁を徐々に、だが確実に打ち破っていく。
 フィールドを形成している黒鍵機がその異変を察知し、デルタ・Qに救援を指示し、デ
ルタ・Qはそれに従い再びあの電撃を放とうとする。

FV「これ以上、邪魔はさせん!」

 電撃の発射直前になっていたデルタ・Qに向かって、肩のバーニアをふかしながらフェ
リスヴァインが突撃する。まっすぐに突き出された左の剣がデルタ・Qの右肩を貫き、そ
こから剣を伝って電気が漏れ出す。
 電気はフェリスヴァインとデルタ・Qの体を同様に焼いてゆき、フェリスヴァインの体
にも苦痛がにじむ。デルタ・Qは突き刺さっている剣を引き抜こうとフェリスヴァインの
腕をつかみ引き離そうとする。が、フェリスヴァインも引かずにさらに力を込めて手にし
た剣を押した。

FV「言ったはずだ。邪魔は、させんと!」

 フェリスヴァインがデルタ・Qを押さえている間にも、ホールの裏側ではビーストガー
ダーズによって障壁が徐々に破られようとしていた。フィールドを形成する黒鍵機達にも
過剰な負荷が掛かり、それぞれが不安定に揺られだす。しかし、ビーストガーダーズも負
荷が掛かっているという点では変わりはなかった。それでも、三人は迫り来るタイムリミ
ットと戦い、ありったけの力をフィールドの破壊に注ぐ。

輝美「あと……一分」

 輝美が、時計を見てぽつりと呟く。

「後、30秒っ!」

 瞬が、コマンダーに表示された時刻を見て拳をぎゅっと握る。

青年「後……20秒……」

 ビーストガーダーズがぶつかり合うフィールドを見つめ、青年が呟いた。輝美は文字盤
を見ていられなくなり、両手を握り締め、祈るようにうつむく。

輝美(姉さん……ッ!!)

 文字盤の秒針が、11秒前を示す。
 ビーストガーダーズに囲まれたフィールドに亀裂が入り、光が漏れ始める。
 デルタ・Qがフェリスヴァインの腕を振り払い、頭頂部から強引に電撃を放とうとする。
フェリスヴァインは弾かれた手をもう片方の手に添え、一気に刃を振り払う。
 デルタ・Qの頭頂部が光を放つ。

『オオオォォォォォッッ!!!』

 かちっ、と無機質な音を立て、秒針が一秒動く。
 同時に電撃の発射アンテナをフェリスヴァインが切り飛ばし、ガラスが割れるような甲
高い音を立ててフィールドがはじけ飛んだ。
 フィールドが破られると同時に、それまで堅く閉ざされていた扉が弾かれるように次々
と開いていった。

輝美「開いたっ!?」
デューン「みんな、早く外に出ろぉっ!!」

 それまで床に座り込んでいた人たちは、二人の声に弾かれたように我先にと外に向かっ
て駆け出していく。体力の残っているスタッフが起き上げれぬほど消耗している人を抱え
て外に出て行くのを見ながら、床に座り込んでいた博美は自らも立ち上がろうと床につけ
た腕に力を込める。しかし、自分で思っていた以上に消耗していたらしく、いくら力をい
てもまったく体が起き上がらない。

博美「あ、あれっ?」
デューン「だ、大丈夫か?」
博美「あ、はは……ちょっと、力はいんないや。デューン君、先行っ……」

 博美は空元気を見せて心配させまいとしたが、言葉を言い切る前にデューンに無言で持
ち上げられた。膝と肩を抱きかかえる、いわゆるお姫様抱っこという形である。

博美「ってぇぇぇぇぇっ?!」

 いきなり持ち上げられた博美は慌てふためく。

博美「へあっ? ちょっと、いいよ!」
デューン「大丈夫だって。俺、体力あるからさ」
博美「わ、私、一人で歩けるし……」
デューン「気にしなくていいって」

 博美の言うことを気にも掛けずデューンは外に向かって歩き続ける。博美も抗うのをや
め、頬を赤らめながら彼の首に両手を回した。

 


エクシード「エアブレイド!」
グランリッド「グランショット!」
ウェルシャーク「アクアガンッ!」

 フィールドを破られ、その力を失った黒鍵機達をビーストガーダーズの攻撃が次々と破
壊していく。そして振り下ろされたグランロッドが最後の一体を破壊した。

グランリッド「これで最後、ですね」
エクシード「観客も全員無事だ。後は……」

 エクシードが振り向いた先では、フェリスヴァインがデルタ・Qに突き刺さったヴァイ
ンブレードを引き抜いたところだった。

『フェリス、みんな助かったって!』
FV「ああ。後は、こいつを倒すだけ!」

 そう言って、フェリスヴァインは両手のヴァインブレードの柄尻を合体させる。

FV「双刃剣、ヴァインブレード!!」

 ヴァインブレードを腰だめに構え、両肩のアーマーが水平にスライドし、中から噴射ノ
ズルが顔を出す。ヴァインブレードが炎に包まれバーニアと足のホバーが点火、敵に向か
って一気に加速する。

FV「炎狼刀技、フレイムファング!!」

 炎を纏って突き進むフェリスヴァインの切り上げ、振り下ろす二条の刃が炎狼の牙の如
くデルタ・Qに炎の十字を刻み込む。
 刻まれた炎の牙と共に、デルタ・Qは光を放ちながら爆発の中へと消えていった。

 フェリスヴァインはヴァインブレードを分離させると、血振りをし、剣を両肩のアーマ
ーへと収納した。

FV「我が焔に、断てぬ悪なし!」

 


 フェリスヴァインがデルタ・Qを破壊した頃、デューンに抱えられた博美は心配して駆
け寄ってきた輝美と再会を果たしていた。

輝美「ねえさんっ!」
博美「輝美っ!」

 博美はデューンに目配せをし、地面に下ろしてもらう。目に涙をためながら駆け寄って
きた輝美を見て、デューンは髪型以外まったくそっくりな二人を見比べる。

デューン「……姉妹?」
博美「そ。私の、双子の妹よ」

 姉に紹介され、輝美は浮かんでいた涙を急いでふき取り、折り目正しく礼をする。

輝美「ひ、博美の妹の、輝美です! 姉がお世話になりました」
デューン「えっと、博美……って?」
博美「あ、名前言ってなかったけ、そういえば」

 博美が照れながら頬を掻き、二人は苦笑してため息をついた。

博美「じゃ、改めて。秋月博美、よろしく!」
デューン「竜牙、光一だ」

 博美は一瞬驚いたような顔になったが、すぐに満面の笑みに変わる。そして、二人は固
い握手を交わした。
 輝美はそんな二人を見て微笑を浮かべると、ふと、後ろのほうを振り返った。あの青年
の姿を探していたのだ。しかし、やはりというべきか、青年の姿を見つけることは出来な
かった。

輝美(やっぱり、いないよね……)

 輝美は、自嘲的に笑い、肩を落とす。
 そうして輝美が顔を上げ姉たちのほうを振り向こうとしたとき、夕日に重なった影を見
つけ、輝美の動きが止まる。
 逆光でコートがたなびいているのがようやくわかる程度なのに、輝美にはそれがなぜか
彼だと思えた。輝美がじっと、というよりも呆然としてみていると、ふいに彼の口が開い
た、様な気がした。

『縁があったら、また、逢おう』

輝美「っ……!」

 輝美はそれをみて、はっと息を呑む。
 そうしている間に青年は姿を消し、輝美は止めていた息を吐き出す。

輝美「……はい」

 微笑と朱の差した頬は夕焼けに隠され、恥ずかしげに紡がれた言の葉は黄昏の中にゆっ
くりと解けていった。


<NEXT EPISODE>