七星勇者 フェリスヴァイン
― 序章 ―
ここは、今よりもほんの少し未来の地球。
コンピューターネットワークが発達し、本当の意味で生活の一部となるほど浸透しているけど
それ以外は現在と変わらない世界。そんな世界に、『ちょっとした事件』が起こった。
6年前、とある事件が世間をにぎわせた。
関東のある山中で見つかった遺跡。それは、日本の歴史で言うならば縄文時代よりも以
前の物であるにもかかわらず、当時の技術水準を遙かに超越した建築物等が数多く存在し
ているという、世界的な大発見であった。
そこで、考古学の権威である星崎清十郎博士を中心に遺跡の調査団が結成され、遺跡の
謎の解明に向かった。
そこで発見される物は、まさに驚くべき物ばかりだった。
北極星を中心とした星座図や、人型を表したかのような壁画、剣の柄を模した彫刻などがあり
その最も深い場所には、巨大な狼の石像が存在していた。
調査はそれまで順調に進んでいたが、星崎博士が狼の石像で「なにか」を発見したとの
報告があった後、調査団からの連絡がぱったりと途絶えた。
その遺跡に関わっていた調査団全員が行方不明となり、自衛隊などの必死の捜索にも関
わらず遺留品一つ発見することが出来なかった。またその遺跡も、自衛隊が到着したとき
には、もう、内部へと入ることが出来なくなっていたのだ。
ただ、遺跡を守るように佇む崩れかけた狼の石像と、一つの謎の言葉だけを遺して。
『黒き力が刻(とき)の楔を破り蘇る時、7つの欠片と分かれし白き力蘇らん』
この事件は、現代の怪奇として世界中を揺るがした。
その後、何も発見できないまま半年が過ぎ、結局捜索は打ち切られることとなり、真相
は謎に包まれたままになった。
そして現在。
半年前から現れた『暗黒の使徒』という謎の組織が世界に恐怖をもたらしていた。
その、巨大ロボットを使った手口により、警察はもとより、軍でさえも手を出すことが
出来ず、町が破壊され、エネルギー資源を強奪されるのをただ見ているしかなかった。
しかもそのロボットは、次第に『暗黒の使徒』ではない犯罪者達にも渡り始めていった。
それは、次第に日常生活ともそう遠くない問題になっていった。
数多の輝きがちりばめられた満天の星空。
一人の少年がそれをうれしそうなほほえみを浮かべて望遠鏡を覗いてみていた。
その顔がふっと曇る。
星を見るのは、少年の祖父の趣味だった。少年も、祖父の影響で星を見ることが好きに
なっていった。
その祖父は、そして父親は、今は居ない。
少年の祖父と父は、6年前の調査団に参加していて、今は行方不明になっているのだ。
少年は、いずこに居るとも判らない家族を思って、再び望遠鏡をのぞき込んだ。
望遠鏡のレンズの中にはその中心に北斗七星が映っている。
少年は、特に理由はないがこの七つの星が好きだった。
その時不意に、遺跡を調査していた頃の祖父の言葉が思い出された。
『あの遺跡には、きっと勇者が眠っとるんじゃ。とんでもない悪党が現れたとき、その勇者が
よみがえって悪いヤツをやっつけるんじゃ!』
どんなに年老いても夢見ることを忘れない、何とも祖父らしい言葉だった。
その言葉は、幼い頃から少年の中に漠とした期待を抱かせ続けてきた。
望遠鏡から目を離し、裸眼で夜空を見上げる。
「勇者、かぁ……」
勇者。
心をときめかせる言葉、希望を感じさせてくれる言葉。
誰にも話さない、少年らしい憧れ。
小さな想いが、一つの絆を生み出す。
七つの星をなぞらえた、いにしえの勇者達の物語が幕を開けるのは、もう、すぐ