七星勇者フェリスヴァイン
博物館の外では、謎の襲撃者と警備ロボット隊の戦いが繰り広げられていた。
華奢な作りなだけに機動性の高そうなロボット3隊が、ロボット用の大型ショットガンを構え
敵ロボットにめがけて発射する。
放たれた弾丸は敵ロボットに着弾し、派手な爆発を起こした。
『や、やったか…?』
『……い、いえ、センサーに反応! て、敵は健在です!』
その言葉の通り、爆煙の中から敵ロボットがまるで何も無かったように姿を現す。
鉄球を繋ぎ合わせ、手足をくっつけたようなロボット。
そう、それは、赤いロボットと戦っていたあの鉄球ロボットだったのだ。
あの戦いで負傷した腕には、代わりに肘から下がバズーカになっている腕がくっついている。
鉄球ロボットは、肩についている刺ミサイルを発射した。
それは、警備ロボット3体の内の2体に着弾、その装甲、フレームをたやすく破壊した。
『うわあぁぁっ!』
『だっ、脱出!!』
間一髪でコックピットシートが射出され、乗っていた機体が大爆発を起こす。
残った隊長機らしきロボットが、後ずさりしながら鉄球ロボットに向き合う。
『お、おのれ……まるで歯が立たんと言うのか…!』
《ハッ! 我が『暗黒の使徒』の黒鍵機(こっけんき)・ゴロゴーンに
そんなザコが敵うわけが無いだろう!》
『あ、『暗黒の使徒』だと…!?』
《わかったら、そこをどけぃ!》
パイロットがゴロゴーンと言った鉄球ロボットは、右腕のバズーカを警備ロボットに向けて撃った。
かわす暇も無く、バズーカの直撃を受けた最後の警備ロボットは外装をひしゃげさせて
博物館に叩きつけられる。
そして、ぶつかったところから博物館の壁が崩れていった。
《ヘッヘッヘッ、クリアストーンはいただきだぜ!》
警備ロボットが博物館に叩きつけられた時、瞬はなんとか博物館の裏手に出る事が
できていた。
周りの人達は更に遠くに逃げようと走り出している。
しかし瞬は、何かを探すように辺りを見まわしていた。
瞬「亜希ッ! どこにいるの、亜希ッ!?」
亜希は、瞬とはぐれてからずっと姿が見えていなかった。
瞬は、亜希の姿を探して辺りを駆けまわっていた。
その頃亜希は、博物館の中心とも言えるクリアストーン展示室に閉じ込められていた。
亜希は人の流れに飲まれたものの、途中ではじき出されてしまい、辺りをさまよって
いるうちにこの部屋に入ってしまったのだ。
しかも悪い事に、度重なる衝撃の為にドアの枠が歪み、出るに出られない状況になって
しまったのである。
亜希も始めは扉を叩いてみたりといろいろやっていたのだが、それらが無駄に終わった
と知ると、半ば諦めてクリアストーンのそばで膝を抱えて座りこんでいた。
亜希は、すっと目を閉じて、はぐれた幼なじみに想いを馳せていた。
亜希「……瞬…」
瞬はあの後も周りを走りまわったが、亜希の姿を見つける事ができなかった。
瞬の頭に、いやな想像が浮かんでしまう。
瞬「亜希、もしかして、まだ中に取り残されてるんじゃ…!」
亜希も自分と同じように逃げられたのならいいけど、もしそうだとしたら、じっとしては
いられない。
瞬は、もう一度中を捜そうと博物館のほうへと走り出した。
しかし、瞬がそう思った時にいた場所が、警備ロボットがぶつかった影響でできた
亀裂のすぐ近くであった事は、まさに不運だったと言うより他に無い。
瞬の真上の壁が崩れ、その瓦礫が瞬めがけて落下してきたのだ。
それを見て、瞬は思わず立ち止まってぎゅっと目を閉じる。
瞬「うわあぁぁぁぁっ!!」
瓦礫が瞬を押しつぶさんと迫る。
瞬が諦めかけたその時、瞬の周りを疾風が駆けぬけた。
服の襟を何者かがつかんで、瓦礫とは離れたところまで瞬く間に飛び去っていたのだ。
地面に着地すると、瞬は、自分が助かったのを知り、何が起こったのかと思いながら
ゆっくりと目を開けた。
遥か向こうには、先ほど瞬を襲った瓦礫が地面で砕けている。
とすれば、瞬を助けてくれた人は誰なのだろうか。
辺りを見回すと、そこには誰もおらず、代わりに一匹の銀色の犬が瞬を見て立っていた。
その左足には、瞬が巻いてあげた亜希のハンカチがしっかりと巻かれている。
その犬は、瞬が手当てをしたあの犬だった。
それだけでも驚きなのに、次の瞬間、それ以上の驚きが瞬を襲った。
瞬を見つめていた犬は、瞬が気付いたのを見て口を開く。
犬「ケガは無いか、少年?」
瞬「え……?」
目の前で起こったあまりにも非常識な出来事に、瞬の思考回路は停止した。
無理も無い話である。
目の前の犬が、確かに人の言葉を発したのだから。
瞬「犬が……しゃべった……?」
瞬は、そう言うのがやっとだった。
犬は瞬の言葉を聞いて、ややバツが悪そうに表情を歪ませる。
犬「すまない。驚かせるつもりは無かったんだが」
瞬はごくりとつばを飲みこんで目の前の犬を見る。
この頃になって、瞬はようやく現在の状況と言うか、何が起こっているのかを冷静に
把握できるようになっていた。
瞬「もしかして、ボクを助けてくれたのって……キミ?」
犬がこくりと頷く。
犬「奴が暴れているのを見て、急いで駆けつけてきたのだ。
…間に合ってよかった。このハンカチの恩を返す事ができるからな」
瞬「奴って……あのロボットの事?」
犬「ああ。
……少年、早く立ち去るがいい。ここは危険だ」
瞬「だ、だめだよ!」
犬「なぜ?」
瞬の剣幕に、犬が怪訝な顔を見せる。
瞬「亜希が、まだ中に取り残されてるかも知れないんだ! ボクだけ逃げられないよ!」
犬「このハンカチの少女が? そうか……」
犬は、瞳を閉じて何かを考えこむ。
犬「……分かった、少女の事も、ヤツの事も、俺に任せるがいい。君は早く安全な場所まで
逃げるんだ」
瞬「で、でも……」
瞬は、犬がしゃべって恐いとか言うよりも、純粋にこの犬があんな巨大なロボットや
今にも崩れそうな建物に立ち向かっていく無謀さを心配していた。
そんな、普通とはちょっとずれているところや、純粋に相手を想える優しさが
瞬のいいところでもあった。
それを感じ取ったのか、犬は嬉しそうに微笑んで瞬に話しかけた。
犬「……少年、名は?」
瞬「え? ……ほ、星崎 瞬…」
犬「そうか。瞬、これから起こる事を、なるべく人には言わないでくれ」
瞬「…え?」
戸惑う瞬をよそに、犬はロボットめがけて走り出した。
そして、遥か彼方に遠吠えを上げる。
オォォォォォォォォ……!
すると、道の向こうから真っ赤なスポーツカーが犬のほう目指して走ってきた。
それも、無人のスポーツカーが。
犬は、ぶつかろうとしている事も構わずに車に向かって走る。
犬「ドライブ・オン!」
犬の体が真っ赤な光に変わり、それが車にすいこまれていく。
一瞬、車が赤い光に包まれたかと思うと、ヘッドランプがまるで意思を持ったかのように輝いた。
そして、犬と一体となった車は、方向を反転してゴロゴーンに向かって突き進む。
パイロットを失い、鉄くずと化した警備ロボットをもてあそんでいたゴロゴーンが
向かってくる車に気付いた。
《なんだぁ? あの車は》
ゴロゴーンは、警備ロボットを放り投げると赤い車に向かって刺ミサイルとバズーカを
発射した。
だが、車はとても無人とは思えない巧みなハンドルワークで向かってくる弾をことごとく
かわしていく。
赤い車「チェィンジ!」
赤い車が宙に浮かび上がり、フロント部が展開して脚部になり
リア部が左右に分かれて肩部となった。
さらに、サイドが分離して腕となり、リア部が分かれた後から頭部がせりあがった。
車からロボットへ変形したそれは、地響きをさせて地面に降り立った。
真紅のボディ。狼のエンブレム。
その姿を見て、ゴロゴーンが驚愕する。
《き、キサマッ! なぜここに!?》
赤いロボット「言ったはずだ。貴様を逃しはしないと!」
ゴロゴーンは態度を一変させ、足のホバーを吹かし始めた。
対する赤いロボットも構えを取る。
赤いロボット「俺の名はフェリス。貴様達『黒き力』を操る者達を打ち倒す、『白き力』の勇者だ!」
遠くからそれを見ていた瞬は、半ば呆然としつつその様子を見ていた。
瞬「フェリス……白き力の……『勇者』……!」
そして、6年前に祖父から聞いた言葉を思い出す。
そう、あの遺跡には、『勇者』が眠っていると。
瞬「いたんだ……勇者はいたんだ!」
瞬が感動して見つめる先で、フェリスの戦いは始まっていた。
フェリスは、先の先頭の経験から、即座に拳銃を取り出す。
フェリス「ウルフマグナム!」
ウルフマグナムと呼ばれた拳銃が連続して火を吹く。
ゴロゴーンはそれを右腕のバズーカの砲身で受け止める。
バズーカの砲身は堅いものらしく、弾がまともに当たったにもかかわらず傷一つ付いていない。
そして、ゴロゴーンはお返しとばかりに両肩の刺ミサイルを発射した。
自分に向かってくるミサイルを見て、フェリスはウルフマグナムの銃口を
すばやくミサイルの方向へと向ける。
フェリスは引き鉄を引くと、すぐさまもう一方のミサイルにもウルフマグナムを放った。
マグナムは見事にミサイルを撃ちぬき、ミサイルはフェリスの元に届く前に爆発した。
フェリス「同じ技は、二度も通じん」
《ち、チクショウ…! だったら、こいつはどうだっ!》
ゴロゴーンは右腕のバズーカをフェリスに向ける。その銃口から、エネルギー弾が
フェリスめがけて発射された。
フェリス「ムダだっ!」
フェリスがウルフマグナムを逆手に持ちかえると、銃身がグリップと水平になり
一振りのナイフに変形した。
フェリス「マグナム・ナイフッ!」
フェリスは向かってくるエネルギー弾めがけてナイフを持った腕を振り上げた。
ナイフは、エネルギーで構成されているそれをいともたやすく切り裂き、真っ二つに
なった弾はフェリスを通りすぎて、後ろの地面に着弾した。
逸れた弾が地面にあたり、土煙を巻き起こす。それは、瞬く間にフェリスの姿を
覆い隠していった。
ゴロゴーンのセンサーからもフェリスの姿が土煙の中に消える。
その時、土煙の中から2条の閃光が突き抜け、ゴロゴーンのバズーカが接続されている
関節部を打ちぬいた。
銃弾を受けた間接部が爆発を起こし、バズーカが大きな音を立ててアスファルトにめり
込んだ。
《グ……ンだとォ!?》
やがて、土煙が晴れていき、中からウルフマグナムを構えたフェリスの姿が現れる。
フェリス「これで、お前の武器は全て封じた」
《ぐ、ぐぐぐぅぅっ!》
フェリス「覚悟はいいか!?」
フェリスは、胸のエンブレムを突き出すポーズを取った。
狼のエンブレムに光が宿り、そこから炎が生まれる。
フェリス「ファイヤーシュート!!」
フェリスの叫びと共に、エンブレムから狼の頭部のような火球が放たれた。
炎はゴロゴーンを捉え、そのボディに突き刺さった。
《うおおっ?!》
ドゴォォォォォン!
ゴロゴーンのボディが、一瞬の内に爆炎の中へと消えていった。
それを見た周囲の人達から歓声が巻き起こった。
瞬も同じように、興奮に沸き立つ。
瞬「すごい! すごいよ、フェリス!」
その声に気付き、フェリスは瞬のほうを振り向いた。
だがその時、爆炎の中から何かがフェリスめがけて飛び出してきた。
瞬「フェリス、後ろっ!!」
フェリス「何ッ!?」
フェリスは間一髪のところで振りかえり、向かってきたそれを両腕で受け止めた。
フェリスは、相手を見て驚く。
それは、ファイヤーシュートを受けて炎の中へと消えていったはずのゴロゴーンだったのだ。
ゴロゴーンのボディには、まだあちこちに火がついていたが、装甲自体にさほどの
変化は見られなかったのである。
フェリス「貴様ッ! ファイヤーシュートを食らって……!」
《テメェのキメ技はこの前見させてもらったからな! そのための耐火装甲よ!》
フェリス「なん、だと……っ」
《ケッ! このまま押しつぶしてやるぜ!》
ゴロゴーンは足のホバーを吹かし、残った左腕でフェリスを押し始めた。
フェリスも、おされまいと全力で拳を押し返す。
フェリス「クッ…!」
《オラオラどうした? 勇者さんよ!》
その時、ゴロゴーンの腕を押さえていたフェリスの左腕が、スパークを起こし始めた。
フェリス「ぐあっ!!」
瞬「フェリス!?」
そう、そこはまさに、先の戦闘でフェリスがゴロゴーンから受けていた負傷の場所だったのである。
左腕の力が半減し、フェリスはじりじりと押され始める。
フェリスが押されるその背後には、半壊した博物館があった。
《ちょうどいい! テメェを博物館に叩きこんでやる!!》
ゴロゴーンはホバーの出力をあげ、更なる力でフェリスを押していった。
フェリスも押し返そうとするものの、左腕の負傷のせいで思うように力が出ず
思いとは裏腹にじりじりと博物館に押されていく。
そして、その足が博物館の端にかかった。
フェリス「こ、これ以上……」
苦痛に歪むフェリスの瞳に、更なる闘志が燃え上がった。
フェリス「これ以上、進ませるものかーっ!!」
そう叫んだ途端、それまでのフェリスからは信じられないほどの力が生まれ、押される
体をそこで食いとめた。
自分に手当てをしてくれた亜希を守りたいという気持ちが、フェリスに更なる力を
生んだのだ。
しかしそれでも、ゴロゴーンを押し返すとまでは行かなかった。
《チッ! しぶといヤツだ!》
フェリス「こ、このままでは……」
こんな、瞬間の力がいつまでも持続するわけは無かった。
いずれ、フェリスは力負けして博物館にたたきつけられてしまうだろう。
そうなってしまっては、亜希を救う事はできない。
フェリス「かくなる上は……っ!」
フェリスは決死の表情でゴロゴーンを睨みつけ、胸のエンブレムに再び炎を灯した。
《テメェ! なにを?!》
フェリス「この至近距離ならば、いかな耐火装甲といえ耐えられまい!」
《な、何考えてやがる!? そんな真似すれば、テメェも!》
フェリス「貴様の暴虐を許すよりは遥かにましだ!」
フェリスの悲壮な決意は、おぼろげながら瞬にも伝わってきた。
瞬「そんなっ! フェリス、ダメだよ!」
フェリス「……心配するな、瞬。ハンカチの少女は、俺が守って見せる……」
瞬「でもっ! フェリスが、フェリスが死んじゃうよっ!!」
瞬は、涙を流しながら叫んだ。
フェリスの力になりたい。フェリスを助けたい。
でも、自分にできる事など何一つない事が、いわば本能で分かってしまった。
それが、ただ、無性に悲しかった。
フェリス「瞬! さらばだ!!」
瞬「フェリス――――――――――――ッ!!」
瞬は叫んだ。
フェリスの力になりたい。フェリスに生きていて欲しい。そんな、願いを込めて。
そして、その声がフェリスの内なる魂に響き渡った。
フェリス「!?」
それが響き渡った時、フェリスの中の何かが目覚めた。
もう、全力は出し切ったはずなのに、まるで泉が沸くように信じられないほどの力が
後から後から湧いてきた。
その力ならば、今、フェリスを押さえつけているものを押し返すことなど、造作もない事だった。
フェリス「ウオォォォォォォォッ!」
《なっ、なんだとぉ!?》
フェリスはゴロゴーンを押し返し、あまつさえ、その巨体を地面に投げ倒した。
ゴロゴーンは信じられないというような声をあげ、それを行ったフェリスさえも
信じられないと言った表情で自分の腕を見つめている。
フェリス「一体、俺に何が……?」
もう、限界だったはずだ。
なのに、瞬の叫びが聞こえてきたらありえないほどの力が体の中に湧きあがってきたのだ。
フェリスは、涙にぬれた顔で自分を見上げている瞬を見つめた。
フェリス(この少年、まさか……)
フェリスが思案にふけっている間に、ゴロゴーンが体を起こしてきた。
《テ、テメェ、どこにそんな力がのこっていやがった!?》
フェリス「俺にも信じられん。が、今はそれを考えている時ではないな」
そう言ってフェリスは、ゴロゴーンに狼のエンブレムを向けた。
フェリス「今は、この力で貴様を倒すのみ!」
《そうは行くかよォォォォッ!》
ゴロゴーンは、再び左拳をフェリスに放ってきた。
だが、その時には既に、胸のエンブレムに炎の球が生まれていた。
フェリス「さらばだ!」
そしてフェリスは、必殺の一撃を放つ。
フェリス「ファイヤーシュート!!」
今再び、炎狼が突き進む。
炎の狼は、今度こそ間違いなくその顎で悪しき巨人の体を食い破った。
《チクショォォォォォッ!!》
ドッゴォォォォォォォォン……!
ゴロゴーンは、爆発の中でただの鉄クズへと姿を変えていった。
その後、ゴロゴーンが倒された事を聞いたレスキュー隊が駆けつけ、博物館の中から
亜希は無事保護された。
発見された時、亜希はすっかり眠っていたが、体にはどこもおかしいところは無かった
ようで、その事を聞いた瞬は、ホッと胸をなでおろした。
そして瞬と犬の姿に戻ったフェリスは、夕暮れの道を瞬の家に向かって歩いていた。
瞬「フェリス、今日はありがとう。ボクと亜希をたすけてくれて」
フェリス「いや、助けられたのは、俺の方だ」
瞬「?」
フェリス「あの時、俺は奴と刺し違えるつもりだった。
だが、お前の俺を呼ぶ声が聞こえた時、自分でも信じられないほどの力が
俺の中から生まれてきたんだ。
だから、ありがとう、瞬」
瞬「そ、そんな、ボク、なんにもしてないよ」
瞬は、照れたように顔の前で手を振る。
フェリスは、そんな瞬を見てふっと微笑んだ。
瞬「あ、あのさ、フェリス……」
フェリス「ん? なんだ?」
瞬「あのさ、その……」
フェリス「どうした? 恥ずかしがらずに言ってみろ」
瞬「うん。えっと、その」
瞬は大きく深呼吸をすると、立ち止まってキッとフェリスの顔を見た。
フェリスも立ち止まって、瞬の言葉を待った。
瞬「ボッ、ボクのお友達になって……くだ……さい」
フェリスは、あっけにとられた顔で瞬を見上げている。
フェリス「お、お友達?」
瞬「う、うん」
フェリス「し、しかし、俺は……」
瞬「うん、フェリスに迷惑かな、っていうのは分かってる。
けど、せっかく会えたんだし、フェリスとお友達になれたらいいなぁって…」
フェリス「俺は、人間でも、犬でもないんだぞ?」
瞬「うん。勇者なんだよね?」
フェリス「お前を危険に巻き込んでしまうかも…」
瞬「でも、なにかお手伝いしたいんだよ」
ニコニコと微笑む瞬をフェリスは見つめていた。
フェリスはふっと微笑む。
予感はあったのだ。この少年とは、一時の出逢いでは終わらない運命であるような予感は。
それが見事的中した事に、フェリスは内心苦笑した。
フェリス「そう、頻繁には会えないが、それでよかったら……」
瞬「友達になってくれるの!?」
フェリス「ああ」
瞬の表情が、徐々に歓喜に彩られていった。
瞬「ありがとう、フェリス!!」
瞬は感極まってフェリスに抱きついた。
フェリスも抱きつかれながらくすぐったそうに微笑む。
空には、一番星が輝いていた。