『エルファーシア正伝 魔弾の章』
終章 〜Start!〜
 ミリィが降魔銃を継いだその夜、ミリィ本人の口から、ワシュウと共に旅立つ事が告げられた。
 子ども達はみんな驚き、シンシアにいたってはあれこれと理由をつけてミリィを止めようとしていた。
しかし、ミリィの決意は固く、結局シンシアが折れる形となってミリィの旅立ちが決まった。
 それから二日の間、旅の支度やミリィが旅だった後の事を話し合ったりしてあわただしく過ぎ、あっ
という間に旅立ちの朝を迎えた。
 旅立ちの日、空は雲一つない晴天に恵まれた。
 ワシュウとミリィは旅支度を終え、マクレイガーズファームの正門のところまで来ている。その後ろ
には、見送りに来たグスタフと子ども達がいた。
 シンシアはやはり心配なのか、風邪を引くな食べ物に注意しろと、あれこれミリィの世話を焼いてい
る。
「いい?ワシュウさんがついてるから大丈夫だと思うけど、万が一ってことがあるから、十分に注意す
るのよ?」
 未だに心配そうなシンシアに、困り果てた顔でミリィが話した。
「もー、ずっとおんなじこと聞かされたからいいかげん覚えたわよ。シンシアも心配性なんだから」
「でもね…」
 シンシアの小言がまだまだ続きそうな予感がして、ミリィは心底疲れた顔をする。
 そんなミリィに、近くで見ていたワシュウが助け舟を出した。
「シンシア、その辺にしてあげてください。ミリィも十分に分かっていますよ」
 グスタフもそれに続いて、茶化すようにフォローをいれた。
「そうだぜ、シンシア。大体、旅に行く前に疲れさせてどうすんだ?」
「わかりました! …ミリィ、ホントに気をつけるのよ?」
「うん、分かってるって!」
 ようやくシンシアから開放されたミリィは、心底ホッとした表情でワシュウの元へ駆け寄ってきた。
 ミリィがワシュウのところまで来たのを見て、グスタフはワシュウに話しかけた。
「ワシュウ、俺の娘の事、頼んだぜ」
 ワシュウも、その言葉に真剣な眼差しで応えた。
「ええ、任せてください」
「大丈夫よ! 私だって、子どもじゃないんだから!」
「だから、心配なんだよ」
 グスタフの言葉に、ミリィはむっとした顔をする。
「それ、どう言う意味?」
 ミリィの剣幕もどこ吹く風と、グスタフはしれっとして応えた。
「どうもこうも、言葉通りだろ」
「もーっ」
「まあまあ、その辺にしておきましょうよ」
「うん、分かった」
「ま、そうだな……ミリィ」
「何? パパ?」
「お前に渡すものがあってな。……これだ」
 グスタフは、胸ポケットから取り出した四つのカプセルのようなものをミリィに渡した。そのカプセ
ルには、それぞれ『A』、『B』、『R』、『S』の文字が刻まれている。
「これ、何?」
「降魔銃のアディションパーツだ。こいつを組み合わせる事で、降魔銃は全部で五つの形態をとること
が出きる。ちゃんとそれぞれの特性を理解して、その時に応じた使い方をしろよ」
「うん……ありがとう、パパ!」
 ミリィは、自分の事を気遣ってくれる父に感謝して、弾けるような笑顔で答える。

 話の着いた所で、ワシュウとミリィは改めてみんなの方を向きなおした。
「それでは、行ってきます」
「行ってきます、パパ、みんな!!」
 ワシュウとミリィは、後ろを振り向きながら、手を振って歩き出した。
 そんな二人に、グスタフ達から別れや激励の声が飛ぶ。
「いってらっしゃ〜い!」
「がんばれよ〜!」
「きをつけてね〜!」
「またね〜!」
「しっかりな〜!」
 送られるたくさんの言葉に、ワシュウとミリィは大きくてを振って応えた。
「またね〜! みんな〜!!」
 みんなに見送られて、ワシュウ達の姿は遠ざかっていった。
 少し歩いたところで、ワシュウはミリィに話しかけた。
「ねぇ、ミリィ。ホントに、後悔していませんか?」
「ん? 降魔銃を受け継いだ事?」
「ええ、それと…この旅についてきた事です」
 ミリィはにんまりと笑うと、力いっぱいワシュウの背中を叩いた。
「な〜にいってんのよ!」
「あいたっ!」
 ワシュウは少し涙目になりながら、背中をさすった。
 ミリィはそれを気にせずに、話を続ける。
「降魔銃を継いだのも、旅についてきたのも、両方私がやりたかった事なんだよ? やりたい事やって
後悔する事なんてないじゃない!」
「ミリィ…」
 ワシュウは空に輝く太陽のような笑顔を浮かべて、ミリィよりも前に歩いていった。
 そして後ろを振り向き、ミリィにその笑顔を向ける。
「それじゃあ、行きましょうか!」
 ワシュウの笑顔に、ミリィも笑顔で応えた。
「うん!」
 二人は顔を合わせて笑い会うと、どちらともなく走り出した。


 5千年の時を経て再びよみがえるエルファーシア十二闘士の伝説。
 伝説の時を生きた十二闘士と、新たなる世代の十二闘士の旅立ちが、この新たなる伝説の幕を開く。
 その先に待ちうけるものを知る術など全くないが、今二人の見つめる未来には希望の光が満ち溢れて
いた。
「さあ、冒険の旅へ、レッツ・ゴーー!!」
 
 新たなる時代を生きる十二闘士達の物語が、今、始まる。

〜Fin〜

 

 

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