七星勇者フェリスヴァイン
それは、とある月夜の公園。
月明かりと静寂、街灯の灯りのみが周囲を統べる中、一人の少女が静かにたたずんでい
た。少女は小高い丘の上にあるその公園の縁に立ち、眼下に広がる町と、その上に浮かぶ
月を静かに眺めている。
少女のポニーテールにくくってある髪を夜風が揺らしたとき、機械的な足音が少女の元
に近づいてきた。それに気づいた少女が、足音の聞こえるほうに目を向ける。そちらの闇
の中よりゆっくりと姿を現したのは、右手に西洋剣を逆手に構えた、闇になお映える黄の
装甲を有したロボットだった。
少女は、その姿を認めるとうれしそうに微笑む。
少女「終わりましたの?」
黄のロボットは、少女の下まで来ると恭しく膝をついた。
ロボット「はっ……」
少女の口が、そのロボットの名をつむぐ。その声に導かれるようにロボットは顔を上げ
た。その目に、少女の微笑が映る。
ロボット「……姫」
少女「もうすぐ、お仲間に会えますわね」
少女は、さながら春の日差しのように柔らかな笑みを浮かべる。
そして、少女とロボットは、その「仲間」に思いを馳せるように夜空に浮かぶ月を見上
げた。