七星勇者フェリスヴァイン



 エリオスロードは体制の崩れたナマズロスに向け、両腕のサンダーニードルを水平に突
き出す。

EL「プラズマチャージッ!!」

 いくつもの円環状の稲妻が2本のサンダーニードルを取り囲み、その中に高密度の
プラズマエネルギーが生み出された。

EL(姫、今しばらくのご辛抱を!)

 今にも暴走せんとするそのプラズマ球をねじ伏せ、その矛先を滅ぼすべき敵へと向ける。

EL「サンダァァァァッ! ジャベリンッッ!!」

 邪悪なる獣めがけ、巨大なる雷の槍が敵を滅ぼさんと解き放たれた。
 必殺の威力を込め、雷の戦槍がナマズロスめがけて突き進む。

グォァァァァァァァッ!!

 サンダージャベリンがナマズロスのバリアに突き刺さり、辺りが落雷ような轟音と共に
閃光に包まれた。
 雷の残滓が残る腕が、脱力して下に下がる。

EL「こ、これで……っ」

 エリオスロードは、光の薄れ行くその先に目を凝らす。だが、その先から現れたのは、
エリオスロードの願望を裏切りいまだ健在である敵の姿であった。
 しかし、決して無傷だったわけではなく、むしろ瀕死という方が合うほどにぼろぼろに
なり、焼け焦げていた。これならば、さほど労せず倒すことが出来るだろう。エリオスロ
ードは止めを刺さんと萎えかけた腕を奮い立たせ、サンダーニードルを構える。

ブリント「チィッ! 戻れ、ナマズロス!」

 ブリントは戦闘機からナマズロスに光線を照射し、それを浴びたナマズロスは瞬く間に
戦闘機の中へと吸い込まれていった。ナマズロスを回収したブリントは、これ以上なく憎
憎しげにエリオスロードを睨み付ける。

ブリント「このままじゃ……このままじゃ、終わらせねぇ……ッ!」

 その捨て台詞を残し、ブリントを乗せた戦闘機を彼方へと飛び去っていった。

 

 


フェリス「とりあえずは、退けたか……」
EL「……姫っ!」

 エリオスロードは、機内の沙耶香に呼びかける。しかし、中からは沙耶香の弱々しい吐
息が漏れるのみで、合体前に宣言した制限時間が間近に迫りつつある。エリオスは、急い
で合体解除シークエンスに入る。

EL「クッ……! 緊急脱出装置作動! 合体解除!!」

 エリオスの指令により、エリオスロード内の沙耶香が光に包まれて外へとはじき出され
る。さらに合体が解除され、プラズマシャトルが中空へと消えていった。
 エリオスは、そんな暇も惜しいといわんばかりに沙耶香の元へと駆け寄る。それに習う
かのように駆け寄るフェリスと瞬。その場にたどり着いた瞬が、横たわる沙耶香の体を抱
き起こす。

「草薙さんっ!」
エリオス「姫っ!」

 瞬とエリオスが呼びかけるも、激しい体力の消耗で沙耶香の意識は失われており、返事
を返すことも出来ない。
 瞬がなすすべなく戸惑っているとき、遠くの方から一台のリムジンが瞬たちに向かって
走りこんできた。瞬が呆然として見詰める先で、リムジンからわらわらと3人の人間が降
りてくる。その中に父の姿を見つけ、瞬が目を見開く。

「お父さん!?」
陽司「瞬! やはりここだったか」

 陽司も瞬を見つけ、瞬の下へと駆け寄ってきた。続けて、沙耶香に連れ去られたときに
追いかけてきた執事風の老人と、白衣を着た10歳くらいの少女もやってくる。

老人「お嬢様!」
「えっと、あなたは……?」
老人「ああ、私、沙耶香お嬢様に仕えさせて頂いている執事、長瀬倉之助(ながせ くらのすけ)
  と申します。
   お嬢様のことは、私にお任せを」

 倉之助と名乗った老人は丁寧に一礼すると、沙耶香を抱え上げてリムジンに向かって歩
き出した。その倉之助とすれ違うときに、少女が倉之助を呼び止める。

少女「連れて行く前に、コマンダーを渡してくれない?」
倉之助「ああ、分かりました、羽丘主任」

 倉之助はそう言うと、片腕で沙耶香を支えながら、もう片手で器用にコマンダーを取り
外し、リリィに手渡した。そうして、倉之助は改めて沙耶香を抱き上げ、リムジンに乗り
込んでいく。

リリィ「やっぱり、こうなっちゃったわね」
エリオス「羽丘博士……」
リリィ「エリオス、あなたはBBSに戻って。調整があるから」
エリオス「……わかりました」

 リリィの言葉に、エリオスは不承不承といった具合に頷く。

リリィ「お兄さんたちもね。あなた達の出迎えに来たのもあるんだから」
「う、うん……」



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