七星勇者フェリスヴァイン


「クラッシュヘルッッ!!」

 両肩のキャノンから放たれた紫の閃光が、重力の檻に囚われた敵を打ち抜く。その一撃
を受けた敵は即座に爆発するが、ツヴァイオウガは緊張を緩めずに注意深く辺りを見回し
た。
 それを裏付けるかのように、翼の生えた蛇のような黒鍵機が姿を現す。

「……チッ、まだ居るのかよ……」

 その通りだった。倒した数はすでに10を超える。全く同型の黒鍵機が、一体倒しては
次、一体倒しては次といった具合に途切れることなく続く。消耗はさほどではないが、流
石に、いつ終わるのかと辟易してくる。
 そうして左腕のドリルアタッチメントを構え、再度突撃した時、それまでに無い異変が
おこった。
 回転するドリルが黒鍵機を貫いた時、それと同型の黒鍵機が二体、ツヴァイオウガの背
後に出現したのだ。

『なっ!?』

 オウガと雷人がそれに驚く間も無く、黒鍵機はツヴァイオウガを羽交い絞めにする。さ
らには虚空から同型の黒鍵機が一体、また一体。次々とツヴァイオウガの体に取り付いて
いく。

「オイ! 何とかできないのかよ!」
「うるせぇ! さっきからやってるっての!!」

 そう、雷人に怒鳴り返すオウガだったが、言葉とは裏腹にどんどんと体が束縛されてい
く。それは、ツヴァイオウガの力を持ってしてもどうにもならない所まで到達しようとし
ていた。

(ぐっ……くそっ、こうなったら……)

 オウガは、自分の中に組み込まれたある装置を作動させる。その作動と同時に、雷人の
体が光に包まれ始めた。

「ッ! オウガ、何した!?」
「別に。ちょっと、お前を逃がすだけだよ」
「ざけんな!! じゃあ、テメェはどうするんだよ!?」

 当然の如く予想された雷人の怒号に、オウガは苦笑する。そして、ことさら軽薄な調子
で答えた。

「あーもー、ガタガタうるせえってんだ。オラ、とっとと行けよ」
「おい、待てよ! オウガ……ッ!!」

 雷人が言葉を言い終わる前に光がその体を包みきり、雷人はツヴァイオウガの外へとは
じき出された。距離だけを考えて弾き出したからどの辺りまでは行ってしまうか分からな
いが、ひとまず安全な所までは行けるだろう。後は、上手くどこかのBBSと接触できる
事を祈るのみだ。

「俺もすぐに行くぜ! ライトぉぉぉぉォォォォッッ!!」

 ツヴァイオウガは体内の機関を全開にし、その重力の力を解き放った。

 

 

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