七星勇者フェリスヴァイン


 それは、とある日のことだった。
 その日も、由美はヒューマン・インダストリの研究所で仕事をしており、また、いつも
のように昼の穏やかな休み時間を楽しんでいた。
 しかし、何が彼女を動かしたのか、由美は何の気なしに研究所内を散歩することにした
のである。
 あらかたの場所はだいたい由美が普段見ている場所であり、元々彼女が子供の頃からの
探検好きと言うこともあって、この研究所にさして目新しいところは無かった。そこで彼
女は、普段行くことのない地下を探検することにしたのである。
 地下は大きく二つに分かれており、一つが少々の危険を伴うような研究用のセクション。
もう一つが、様々な薬品や研究資材を置いてある倉庫である。上記が地下1階で、地下2
階は同様の倉庫と、駐車場で構成されていた。
 由美は地下1階を軽く歩いて通り過ぎ、地下2階の駐車場へとやって来た。あたりには
所狭しと車が止められている。ちなみに、由美も時々ウルフランダーを利用する際はここ
に止めている。

由美「まあ、なンもないのは解ってんだけどねぇ」

 由美はフッとため息をつき、退き返そうとした。そんな時、由美の目にある物が飛びこ
んできた。それは、倉庫へと繋がっている扉だった。利用者がめったにいない、というか
全くいないと言った方が正しい地下2階倉庫なのだが、それだけに由美の気を引いた。
 なにせ、一部では「開かずの地下倉庫」だの「地下の聖域」だのうわさされている場所
なのである。もちろん、本当に開かないわけでも利用者がいないわけでもないのだが、そ
うそう利用されない場所であるのも違いない。
 好奇心の塊である由美としては、機会があれば是非とも探索してみたいお宝スポットで
あった。
 最後にそこを見て仕事に戻ろうと倉庫に入っていく由美。

 中はそれこそ雑然と荷物が置かれ、棚が並べられている倉庫なのだが、その一角が由美
にはどうにも気になった。そこに何かあるのを確信したかのように、当たりの壁や棚をま
さぐる。すると、由美の手がなにかのスイッチに触れ、それを押すとその壁が自動ドアの
ように開いていった。
 中は通路になっていて、その先には、エレベーターらしき扉が見える。

由美「……こりゃあ……」

 由美は緊張したかのように息を飲みこむ。しかしながら、その目は秘密の発見をした子
供のように煌いていた。

由美「行くっきゃないだろ……!」

 由美は、興奮を隠さぬまま通路の奥へと入っていく。
 由美の姿が通路の奥に消えた時、扉は締まり、元の変哲もないただの壁に戻った。

 

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